M1阪口雄大の卒業制作が学外の設計競技で選奨されました

「古池や 蛙飛び込む 水の音」

これは、松尾芭蕉の有名な俳句の一つです。江戸時代から残る歌の一つですがなんとなく芭蕉が見た景色や、感じた情景がイメージできるかと思います。このように、私たち日本人が何となく汲み取ることのできる情緒や情感のようなもの。言葉には、単純な音の響きや本来の意味を超え、人に物事を想起させる。そんな不思議な魅力があります。建築を勉強してきたからか、傲慢ですが、そのようなものを卒業設計という場を借りて、形にしてみたいと考えました。

「言葉の輪郭をなぞる」

本制作は、設計のきっかけをことばや自分の感情に求めて設計をする。ことばを出発点として、空間を考え、ことばに形を与える。といったひとつの試みです。日本人特有の心の機微や感覚といったものを語源として持つ言葉「大和言葉」これらを設計の手がかりとして設定し、「さみだれ」や「やんごとない」あるいは、「たゆたう」といった言葉をひとこと、ひとこと、形を与えていきました。

42の言葉と2首の歌、1節の文章

そのように作り上げていった、42の言葉。ただその言葉と空間の羅列では、建築にはなりません。最後に和歌や小説、それらの構造を用いて、作り上げた空間を統合します。「拾遺集」「万葉集」芥川の小説「るしへる」これらの力を借りて3つの建築を作りました。建築の内部や空間に現れるいくつかの言葉の情景の端々。断片的でいびつな空間は、様々な解釈の余地を残し訪れる個々人の経験によって立体的な広がりを持ちます。

おそらくこれは、言葉と空間を通した私と世界の対話のようなものでしょう。しかし、それが私のなかでとじたものでなく、この空間の体験者一人ひとりが、空間を通して自らの存在を意識し自分を享受する、そのような空間を目指し、出来上がった空間群です。

私の卒業設計は「赤れんが卒業設計展」「せんだいデザインリーグ」とふたつの卒業設計展に出展させていただきました。これらふたつの展示会は、学生主体の運営団体でありながら、応募総数がどちらも600人以上であり、かなり大規模なイベントでした。どちらも非常に楽しく参加することができ、大会を運営してくださった運営の方々にはとても感謝しています。 

審査会場では、審査員の先生の鋭い指摘や議論、作品についてのアドバイスを受けることができ出展してよかったと思います。 

また、作品を通して他の出展者の学生と作品の議論や意見の交換を行えたことが刺激的で良い経験となりました。外部のコンペに挑戦することは、単に自分の実力を客観的に把握するといった側面だけでなく同年代にものづくりに励む仲間や友人がたくさんいることを改めて実感する、彼らと出会うとてもいい機会であると思います。(ので、もし後輩で出展や挑戦を悩んでいる人がいたら積極的に挑戦してほしいです。)

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